『将棋世界』編集部・會場健大さんにインタビュー‼

E-Stage Topiaプロデュース公演『PHANTOM of the SHOGIKAIKAN』で使用したオリジナル詰将棋を募集するにあたって、多大なるご協力をいただいた會場さんにインタビューしました‼(こちらはまだ稽古期間中だった頃に行われたものです。今回は公演終了後のため、舞台写真とともにお送りします‼)

舞台写真撮影:田名後健吾

太田

このたびはご協力くださり、本当にありがとうございました! おかげさまで今回の公演が実現いたしました‼

會場

こちらこそ面白い企画に携わらせていただき、ありがとうございます。

太田

はじめは募集期間が短かったため本当に応募が来るか心配でしたが、素晴らしい作品が複数届いたのでホッとしました。

會場

そうですね。応募してくださった作品はどれもレベルが高く、趣向を凝らしたものでしたので、楽しく選考させていただきました。

太田

というわけで、我々で選ばせていただいた馬屋原剛さんの詰将棋作品『オペラ座の怪人』や本作の見どころなど、いろいろと伺わせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします!

會場

よろしくお願いします!

詰将棋芝居の印象について

太田

會場さんは詰将棋芝居、けっこう前から観に来てくださってますよね?

會場

初めて拝見させていただいたのは初演『煙詰』(@三栄町LIVESTAGE)です。

太田

そうだ、その時に『将棋図巧』と『将棋無双』の解説本をいただいたのを覚えています!

會場

ただ実は将棋芝居自体は『死と乙女』(@三栄町LIVESTAGE)の時から存じ上げておりまして。その詰将棋作品の作者である山田修司さんと知己があったこともあり、面白いことをする劇団があるのだなと思っていました。

太田

おおっ! 最初から知ってくださっていたとは。さすが将棋関連の情報のプロですね。それで、実際に『煙詰』で観てみて、どうでした? その頃は劇場が小さいということもあり、将棋解説などで使われる大盤が舞台にあって役者が動かしながらストーリーが進んでいくというギミックでしたが。

會場

詰将棋芝居ってこういうことなのか、と衝撃を受けました!

太田

いやぁ、皆さん初めて観た時にはそう仰います(笑)。

會場

だと思います。詰将棋はそもそもストーリー性を表現できる形式のパズルなのですが、それをあのように演劇とリンクさせるというのはまったく発想にありませんでした。

太田

嬉しい反応、ありがとうございます!

オリジナル詰将棋募集という企画について

太田

今回、舞台のためのオリジナル詰将棋募集という初の試みを行ったわけですが、最初にご相談させていただいた時、どう思われました?

會場

面白い試みだと思いました!

太田

ホントですか⁉ 太田が調子に乗って妙な事言い出したぞって思われなかったか心配だったんですが……。

會場

というのも、ストーリーを先に考えて、そこに詰将棋を当てはめるというのは、詰将棋の世界でも非常にレアですが、まったくやられていなかったわけではないんですよ。

太田

そうなんですか!

會場

たとえば駒場和男さんという詰将棋作家さんの作品『三十六人斬り』は「初めに題名ありき」ということで、タイトルが気に入ってそこから作り始めたと作者が書き残しています。

太田

なるほど。タイトルからなんとなく想像はできるんですが、それは結果的にどんな作品になったんでしょう。

會場

38枚の攻め駒が並ぶ盤上で、玉が護衛もなく1枚だけで怒涛の攻めをさばき続ける作品になりました。玉はひとりで36枚は倒すのですが、そこで討ち死にします。詰将棋になるためには2枚の攻め駒が最低でも必要なので、38枚-2枚で三十六人斬りというのがぴったりなわけです。攻め駒2枚と玉だけで詰むというわけで、結果的に煙詰にもなります。無防備煙というジャンルの1号局となりました。

太田

おおー、煙詰ですか。ボクはほぼ鑑賞専門ですが、煙詰は伊藤看寿のもの以外でも好きなテーマです。ということは、そういうタイトルありきの作り方ができる詰将棋作家さんは他にもいらっしゃるだろうと?

會場

そういうことです!

今作の詰将棋としての見どころや馬屋原さんの作品の魅力について

太田

改めてになるんですが、応募作品の選考の際には丁寧に解説をしてくださり、ありがとうございました!

會場

いえいえ。

太田

なにしろボクはこんな芝居作っておきながら、七手詰め以上になると全然解けない上に、詰将棋の評価ポイントとかそういう専門的なこともわからないので……。

會場

いや、それであんな脚本書けるのもすごいですから(笑)。

太田

それで今回選ばせていただいた馬屋原さんの作品ですが、どのような部分が見どころとなっているでしょう?

會場

ヒロイン(角)の心の揺れ動きなどを趣向手順で表現した手腕はもちろんのこと、ヤケクソ中合や収束の両王手など細やかな技巧を凝らして内容にふくらみを持たせているところですね。

太田

ヤケクソ中合は會場さんに解説していただいた時に教えてもらって、語感が面白く「絶対にセリフに入れよう!」と思いました。(※そして脚本上では、ヤケクソになったと金会長が土下座するシーンで記者の飛車がツッコミを入れるセリフとして採用されました)。他にもありますか?

會場

趣向手順の意味付けも、玉方に回収されそうな駒をあらかじめ格納しておくという高度なものとなっています。

太田

この解説も高度なので、とりあえずすごいんだという印象だけ持っておきます。

會場

要するに、解こうとする人はそこの謎解きを楽しめると思いますし、駒の動きを観るだけでも楽しめる作品になっているということです!

太田

あ、それはホントにそうですね! 実際に目の前で並べていただいて、玉将の行動範囲が広いことやすべての駒に見せ場があるところなどは演劇にする時にも見栄えがしますし、ボクも動きを見ていてとても楽しかったです‼

『PHANTOM of the SHOGIKAIKAN』について

太田

先日、完成した脚本を送らせていただきました。物語の感想や注目したいシーン、気になる登場人物などはありましたか?

會場

飛車が将棋記者という役どころじゃないですか。私も記者の役割で現場にいくことがあるので、その仕事ぶりが楽しみですね。

太田

そうですよね! 今回は新将棋会館のお披露目式に取材にやってきたところ、幼馴染の角ちゃんと再開する場面から物語が始まります。彼女がちゃんと仕事してるか、見てやってください。

會場

シーンとしては、変化手順の再現をすごいスピードでやるところ(いわゆる高速詠唱)のパートがあるようなので、そこの演技に注目しています。

太田

新しいスポーツを作ってしまいました! ご期待ください‼

會場

楽しみにしております!

太田

ところで、今回の舞台がきっかけで将棋に興味を持ってくださるお客様もいると思います。でもいきなり実戦を楽しめるようになるっていうのはなかなかハードルが高いと思うんです。ルールや駒の動かし方を覚える以外に、初心者向けの良い楽しみ方ってあったりしますか?

會場

1手詰ハンドブックを解くのがおすすめです!

太田

ほうほう。それはどんなところが?

會場

駒の性能や特徴に少しずつ慣れていくことができると思います。1手詰ということで、演劇のようなストーリー性は望むべくもありませんが、それでもストーリー性の基礎が1手1手の背景にある駒の機能によって成り立っていることが実感できるようになると思います。

太田

なるほど、詰将棋芝居をさらに深く楽しむことにも繋がるわけですね!

會場

1手詰ハンドブックが終わったら、3手詰ハンドブック、5手詰ハンドブックと手数を伸ばしていきましょう!

太田

気づいた頃にはいつのまにか実戦でも楽しむことができる棋力がついているかもしれませんね!

詰将棋芝居の未来について

太田

ところで、ボクは需要さえあればまだまだ詰将棋芝居をしたいと思っているのですが、なにか挑戦してみてほしいテーマやおすすめの詰将棋作品などあったりしますか?

會場

先ほど少し名前の出た、駒場和男さんの作品はけっこううってつけかなと思います。

太田

『三十六人斬り』の方ですね!

會場

はい。その作品に加えて、『父帰る』も父が出奔し、盤上流転の末に家に帰ってくる、しかも母もそこに変わらず待っている、というストーリー性があります。

太田

面白いですね。なんだかいくらでもドラマが作れそうです。

會場

しかも作者の言によれば、『三十六人斬り』と『父帰る』には共通の暗号が仕込まれており、絶世の美女である日野九重のイニシャルを刻み込んだと言われています。

太田

ほうほう。そんな人が。

會場

もっとも、日野九重って誰なのか、調べてもよくわからなかったのですけど……。

太田

もしかしたら著名な方というわけではなく、駒場さんの身近にいる女性だったのかもしれませんね。だとしたら、ラブレターのようなメッセージが込められていたとも考えられます。わかんないけど。

會場

いろいろと想像をかきたてますね。

太田

そうなんです。その「想像をかきたてる」という部分がボクに創作する余地を与えてくれるんです!

會場

詰将棋はひとり静かに楽しむもの、というのが昔からの固定概念でした。それこそ『死と乙女』はもともと独り楽しむという意図で「小独楽」と題されていたのですが、それを解説者が感激のあまり「独りだけで楽しむ作品にはとどまっていない」と考え、なかば勝手に改名してしまったのですね。それが今や定着しました。太田さんの詰将棋芝居にも、そういうエネルギーを感じます。

太田

たくさんの方に「この詰将棋すごくない⁉」って伝えたくてやってる部分もあるので、そうですね。

會場

詰将棋を大衆向けエンターテインメントとして表現していただけるのは将棋側の人間として大変ありがたいことです。本作以降も、引き続いてのご活躍を心より楽しみにしています!

太田

ありがとうございます! これからもがんばります‼

太田

というわけで、いろいろと伺わせていただきました。ありがとうございます!

會場

いえいえ、こちらこそありがとうございます! 本番、劇場で観るのを楽しみにしています!(※千秋楽に観に来てくださりました!)

劇場での公演は終了しましたが、配信アーカイブは5月9日まで公開中です。全キャストのインタビューや舞台監督による様々なギミックの説明が収められたバックステージツアーなど、ここでしか見られない特典映像も盛りだくさんですので、ぜひ配信チケットをご購入して見てみてください‼

https://twitcasting.tv/bsd_live/shopcart/362148

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